【Vol.34】保存版!美容室開業の流れ&必要な書類手続き一覧|開業手続き前編

美容室を開業するには、行わなければならない手続きや、届出がいくつかあります。それは、一か所に提出するだけでなく、税務署や保健所、自治体など関係各所へ、それぞれ必要な書類を提出しなければなりません。

そこでポイントとなるのが提出書類の順番。

開業届や美容所開設届は、美容室開業のために必要不可欠です。しっかりと確認して間違いのないように行いましょう。

今回から前編・後編にわたり、美容室開業の流れや必要な手続き、成功するコツについて具体的に解説していきます。

開業するための必要な書類

美容室が開業するためには、各種書類をいろいろな部署へ提出する必要があります。関係部署へ提出する書類を以下にまとめました。

税務署に提出する書類

  • 開業等届出書
  • 所得税の青色申告承認申請書
  • 青色事業専従者給与に関する届出書
  • 所得税の減価償却資産の償却方法の届出書
  • 棚卸資産の評価方法の届出書
  • 給与事務所等の開設の届出書
  • 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書(※従業員が常に9人以下の場合)
  • 納期の特例適用者に係わる納期限の特例に関する届出書

市町村役場窓口に提出する書類

  • 開業等届出書(※個人事業主の場合)
  • 法人設立/設置届出書(※法人の場合)

保健所に提出する書類(後編で解説)

  • 開設に関する届出の申請
  • 開業等届出書
  • 施設平面図(主要設備が記載されたもの)
  • 施設への案内図(地図)
  • 理/美容師免許証(原本)
  • 管理美容師、管理美容師資格認定講習会修了証(原本)
  • 健康診断所(理/美容師のみ)
  • 登記事項証明書(※法人申請の場合:原本の提出、もしくは原本の提示および写しの提出)
  • 手数料

年金事務所に提出する書類(後編で解説)

  • 新規適用届出
  • 被保険者資格取得届
  • 被保険者異動届
  • 履歴事項全部証明書又は登記簿謄本(※法人の場合)
  • 事業主の世帯全員の住民票(※個人事業主の場合)

管轄の消防署に提出する書類(後編で解説)

  • 防火対象使用開始届出書
  • 防火対象物工事等計画届出書(※店舗の修繕など、模様替えなどの工事する場合)
  • 防火管理者選任届(※収容人数30人以上の場合)

その他

法人の場合は、申請に登記事項証明書が必要となります。また、外国人が届出を提出する場合は、外国人登録証明書が必要となり審査が必要です。

開業に関する書類の大きな流れ

保健所へ提出する書類には、施設平面図などは含まれているため、美容室の工事着工前に行っておくといいでしょう。

そして保健所には開業届を提出しなければならないので、大きな流れをつかんでおきましょう。

  • 開業届の手続き
  • 美容所開設届の手続き
  • 美容院の工事

また、税務署の開業届は事業開始後1ヶ月以内に提出するルールですが、「開業日」に関する明確な定義がないため、開業準備を始めた段階で開業届を出す人もいるようです。

例えば…

店舗名入りの銀行口座を開設したい場合は、店舗開店日より前に開業届を提出するとスムーズ。

美容院が税務署に提出す必要書類一覧表

こちらに美容院が開業するにあたって税務署と市役所など県税を収める窓口で必要な書類をリスト化しました。チェックしながら段取りよく必要書類を提出していきましょう。

税務署へ提出する書類

書類の名称申請時期個人法人注意点
開業等届出書開業後1カ月以内
所得税の青色申告承認申請書開業後2カ月以内
青色事業専従者給与に関する届出書開業後2カ月以内従業員が事業主の家族の場合
所得税の減価償却資産の償却方法の届出書確定申告前
棚卸資産の評価方法の届出書確定申告前
給与事務所等の開設の届出書開業後1カ月以内
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書随時従業員が常に9人以下の場合
納期の特例適用者に係わる納期限の特例に関する届出書随時

都道府県税事務所市町村役場窓口へ提出する書類

書類の名称申請時期個人法人注意点
開業等届出書開業後速やかに(自治体により異なる)法人の別名は「法人設立・設置届出書」

税務署に提出する書類は開業届の他に、大きく分けると「青色申告書関連」と「源泉徴収」に関係するものの2点が挙げられます。

注意点は個人事業主1名のみと、従業員を雇用する場合とで提出すべき書類が異なる点です。

また、書類の種類によっても提出期限が異なるため、提出忘れを防止するためにも開店準備と共に前もって作成しておくといいでしょう。

なお、開業届を作成する際にマイナンバーが必要となるため、書類作成の前に自分のマイナンバーを確認しておく必要があります。また、税務署で受付する場合は、身分証明書のコピーか提示を求められることがあるようです。

それぞれの書き方・説明・注意点

「開業届」の正式名称は『個人事業の開業・廃業等届出書』で、個人事業を開業した際に、開業したことを税務署に知らせるための届出書類です。

書類提出の“要”となる開業届の詳しい書き方を解説します。

なぜ「開業届」を提出するの?

「開業届」を提出しないと、後述する「青色申告承認申請書」による特別控除を受けることができません。

つまり、節税ができなくなってしまうということです。

また、開業届を提出することにより、確定申告の案内など税金に関する案内・申告書・納付書などの書類が税務署から適時郵送されてくるので、抜け漏れのない正しい納税ができます。

青色申告をするためには、事前に開業届青色申告承認申請書を提出する必要があります。

提出期限

その期限はその年の確定申告の提出期限である3月15日、または事業開始日から2ヶ月なので、余裕をもって12月くらいに済ませておくのがベストです。

もし間に合わなかったら、初年度の確定申告は白色申告となり、青色申告は再来年からということになります。

書類の入手&提出方法

国税庁のウェブサイトに届出用紙のPDFファイルがあるので、これをプリントして記入して、自治体で管轄の税務署に提出すればOK。

今はマイナンバーの記入が必要なので、身分証明書のコピーか提示を求められるようです。

開業届の書き方

新規に開業する際の「開業届」の書き方について、実際の書式に沿って説明します。

納税地を管轄する税務署名と提出年月日

まずは、納税地を管轄する税務署名と提出年月日を記入します。税務署の管轄がわからない場合は、国税庁ホームページで確認可能です。

税務署は、市ごとにあるものではないので注意しましょう。

納税地

「住所地」にチェックを入れ、自宅の住所・電話番号を記入します。

個人事業主の場合、原則として自宅の住所地が納税地となります。したがって「納税地」欄には、原則として自宅の住所を記載します。

店舗を納税地にしたい場合は「事業所等」にチェックを入れ、店舗の住所・電話番号を記載します。

事業所などの所在地を納税地とする特例を受ける場合は?

本来の納税地を所轄する税務署長に、納税地の特例を受けたい旨の届出書(「所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書」)を提出する必要があります。

今まで確定申告をしたことがなく、開業と同時に居所地や事業所を納税地とする際にはこの届出書の提出は不要な場合もあるようです。事前に税務署に確認をしましょう。

氏名・生年月日・個人番号

事業主本人の情報を記入します。

開業届の提出時には、マイナンバーの確認が求められます。マイナンバーカードを提示するか、カード両面のコピーを提出しましょう。

マイナンバーカードを持っていない人は、通知カード・個人番号通知書と本人確認書類(運転免許証など)の提示またはコピー提出が必要となります。

職業

「美容師」あるいは「スタイリスト」と記入すれば問題ないでしょう。

美容室の場合

美容業/美容室/美容院/ビューティサロン…など

理容室の場合

理容業/理容室/理容店/理髪店/バーバー/床屋

屋号

店舗名を記入します。美容室の多くは屋号を使用しているため、記載が必要なケースが多いでしょう。

なお、「株式会社」など法人に誤認される単語を使うことはできません。

すでに商標登録されている名前やそれを連想させる単語も使用不可です。「ヘアサロン」などのカタカナはもちろん、ひらがなや漢字に加えて英語(アルファベット)を使うことはOKです。

屋号名をつかって銀行口座を開設する場合は、正確に記入しましょう。銀行に「開業届」を提出して確認されます。

屋号を使わない場合は空欄でも問題ありません。

届出の区分

「開業」「新設」にチェックを入れます。

事業承継により事業の引継ぎを受けた場合は、受けた先の住所・氏名を記載します。

所得の種類

「事業(農業)所得」にチェックを入れます。

開業・廃業等日

開業年月日を記入します。実際に開業した「開業日」(もしくは開業予定日)を記載します。

縁起を気にする場合は、仏滅などの日を避け、大安などの縁起のよい日を開業日に設定するケースもあります。

「青色申告承認申請書」又は「青色申告の取りやめ届出書」

青色申告承認申請書を同時提出する場合は「有」にチェックを入れます。ぜひ同時に提出しましょう。

消費税に関する「課税事業者選択届出書」又は「事業廃止届出書」

こちらの届出書は、年間1,000万円以上の売上がある場合に提出します。

開業段階では年間1,000万円以上の売上げがあるかわからないので、空欄で問題ありません。

事業の概要

「美容室の運営、ヘアケア商品の販売」と記載すれば大丈夫です。

もし法人経営で定款に沿って事業の概要が示されているのであれば、その内容を記載します。

給与等の支払いの状況

オーナー1人だけ、夫婦2人で美容室を運営する場合は記入不要です。

届出日現在において家族以外の従業員としてスタイリスト・アシスタント・受付などを雇う予定があり、給与の支払があればこの欄に記載します。

従業者数と給与の定め方(月給・時給)を明記し、月給8万円以上の人、あるいは掛け持ちで働く人が1名でもいる場合は、税額の有無欄の「有」にチェックします。

給与支払いを開始する年月日には、最初の給料日を記載しましょう。

従事員数

従業員数を記載します。

給与の定め方

日給・月給等の区分を記載します。

税額の有無

「専従者」「使用人」の各区分の全員について、所得税がかからない範囲内の給与である場合には「無」に○を付け、そうでない場合には「有」に○を付けます。

関与税理士

税理士と顧問契約もしくは税務申告代理契約を結んでいる場合に限り、税理士の氏名・連絡先を記入します。

関与税理士がいれば、この欄に記載します。

ただし、関与税理士がいるのであれば、この開業届などの各種書類は税理士が書いて提出してくれることが予想されます。

関与税理士がいなければ、空欄で構いません。

メモ

開業届の提出期限は開業後1ヶ月以内と定められていますが、「開業日」に関する明確な定義がないため、開業準備を始めた段階で開業届を出す人もいるようです。

開業届の提出方法は次の2通りです。

  • 管轄の税務署に持参して提出する(開庁時間外は時間外収受箱への投函も可能)
  • 郵送で提出(当日消印有効)

控が必要な場合はコピーも一緒に提出します。

控の郵送が伴う場合は、切手を貼った返信用封筒も必要となりますので注意してください。

青色申告書関連に関係する必要書類

税務署に提出する書類は「開業届」の他に、「源泉徴収」「青色申告書関連」に関係するものの2点が挙げられます。

開業届けの記入項目の中に「開業・廃業に伴う届出書の提出の有無」というものがありますが、ここで「有」に丸をつける場合は青色申告の承認申請書も必要となります。

確定申告の方法は青色申告・白色申告の二種類がありますが、青色申告の承認申請を行う理由は控除金額を増やしたり納付税額の減らすことで節税に繋がるためです。

どうして青色申告承認申請書を提出するの?メリットを解説

青色申告承認申請書を提出すると、確定申告時に課税所得から最大65万円の「青色申告特別控除」を受けることができます。

30万円以内の備品(減価償却資産)を購入した場合に、購入年度に一括して経費計上できる「少額減価償却資産の特例」も受けられます。

開業する初年度は、美容機器など大型設備や消耗品の導入など何かと出費の多いので、初年度こそ有効活用して、節税対策するのがおすすめです。

青色事業専従者給与に関する届出書

家族に支払った給与を経費として計上できるのが「青色事業専従者給与に関する届出書」。家族の給与を経費扱いにして、節税することができます。

メリットが大きい

青色申告の手続きには確定申告書に貸借対照表を添付する必要があり、細かい帳簿作成が必要となりますが、最大65万円の控除を受けられるメリットは大きいです。

なお、白色申告の場合、売上金額から経費を差し引いた額に対して税金がかかります。

源泉徴収関係の必要書類

給与を従業員へ支払うための源泉徴収関係の必要書類についても解説します。

給与支払事務所等の開設届出書

1人で経営されない場合は、従業員を雇い給与を支払うことになるでしょう。そうすると、給与支払い事務所等の開設届出書を提出しなければなりません。

これは、従業員を持つ雇用主は給与分からあらかじめ天引きした所得税額を源泉徴収として支払う義務があるという理由からです。

従業員に最初の給与を支払った1ヶ月以内に提出できるようにしておきましょう。

源泉所得税の納期の特例の承認申請書

さらに、従業員数が9人以下の場合は、「源泉所得税の納期の特例の承認申請書」も提出する必要があります。

この特例を利用すると、税金を納めに行く手間を半年に1回にまで短縮することが可能となります。

毎月発生する作業を年2回にまとめることができるので、業務効率化のためにも活用しましょう。

都道府県税事務所へ提出する開業に関する書類

美容室を開業するためには、税務署だけでなくいろいろな部署に提出する必要があります。

提出する書類の名称が、自治体によって違う(例えば東京都では「事業開始等申告書(個人事業税)」、大阪府では「事業開始・変更・廃止申告書(個人事業税)」など)のですが、税務署とは別に都道府県税事務所(各自治体の窓口)にいき、開業したことを通知する必要があります。

これは、納税するのが地方税なので管轄が違うという考えからきています。

なお、法人の場合は、「法人設立・設置届出書」を提出します。

開業届を中心に、美容室が開業するための書類について詳しく説明しました。後編では、美容室ならではの美容所開設届を中心に、その他の必要書類について詳しく解説します。