ー美容師として自分の店舗を構え、オーナーとなる。
美容師という職業を選んだ以上、多くの人がひとつの目標とするところですね。
さて、いざ独立開業しようと思うとやるべきことはたくさんあります。 この連載では、美容師として独立開業し、美容室オーナーになるまでに必要なこと、知っておきたいことを詳しく解説しております。
この第2回では、「後悔しない美容室の名前の付け方」について解説いたします。
自分の店を持つにあたって、どんな名前にするかは大事なポイントですよね。後になって店名を変えるわけにはそう簡単にいきませんので、悩むところだと思います。
あなたは店名を考える中で「店名の付け方に何かルールとかあるの?」とか「どんな名前にするのがおすすめ?」など疑問に思ったことはありませんか?
そんな悩みをこの記事で一緒に解決していきましょう。
店名決定は極めて重要! あらゆる方向性からの検討を
美容室を開業するにあたり、店舗名の決定は極めて重要です。
後になってからでは簡単に変えられるものではありませんので、後悔することがないようあらゆる方向性から考えておくべきです。
美容室名を考える上で意識すべきポイントは大きく分けて4点です。
- 商標登録の確認は店名決定の大前提
- お客さん目線で印象の良い店名を考える
- ネット集客で不利にならない店名にすることも大切
- 自分が愛着を持てることは何より重要
商標登録の確認は店名決定の大前提
まず大前提として押さえておくべきことは、他店が美容室名として商標登録している名前は絶対に用いないことです。
これは最終決定前に必ず押さえておくべきポイントです。
万が一、他店が商標登録していることを知らずに同じ名前で美容室をオープンしてしまった場合、商標登録をしている美容室から「商標権侵害の警告書」が届くことがあります。このような通知書・警告書が届いた場合、「必ず店名を変更しなければならない」ことが民法により決められています。
このような事態を避けるため、店舗名の候補を決めたら、それが美容室名として商標登録されていないか事前に確認するべきです。
商標の検索は特許庁が公開している以下のサイトで行うことが可能です。
なお、同じ商標の店舗が見つかっても業種が違えば基本的に問題ありません。
同じ名前で商標登録している美容室がないことをチェックしておきましょう。
お客さん目線で印象の良い店名を考える
2点目の重要ポイントは「お客さん目線で印象の良い店名を考える」ということです。
そうは言っても、なかなか店名だけで好印象持ってもら得ることは稀ですので、正しくは「余計なマイナスを作らない」という方がより正確でしょう。
余計なマイナスを作らず、お客さん目線の店名にするためには以下のようなことをチェックすると良いでしょう。
- 誰でも読める名前にする
- 覚えやすい名前にする
- 発音しやすく、聞き取りやすい名前にする
- 名前だけで美容室だとわかる
- 名前だけで美容室だとわかる
- 近隣の他店舗や有名店と紛らわしいような名前を避ける
誰でも読める名前にする
フランス語やイタリア語で店名をつけると語感がよくおしゃれな印象になることもありますが、そもそもなんて読むのか分からないのではお客さん目線ではありません。
読み方がわからない店名だと店の名前を覚えてもらえませんし、せっかくおしゃれな名前にしても知ってももらえません。
例えば、「C’est la vie」などは美容室でよく見かける名前ですが、読めたでしょうか?
これはフランス語で「人生」などを意味する単語で、「セラヴィ」と読むそうです。フランス語を知っている人なら読めたかも知れませんが、知らなきゃなかなか読めませんよね。
また、読めない店名は書けもしないわけですから、お客さんがネットで検索したい時も不便です。
おしゃれな店名にするのはもちろん良いのですが、「誰にでも読める」ことも意識するとお客さんに優しいでしょう。
覚えやすい名前にする
読みやすさとともに、覚えやすさも重要です。 そのためには名前を短くシンプルにしておくと良いでしょう。
有名美容室やチェーン店などを思い浮かべてみるとわかりますが、短くシンプルな店名が多いことがわかります。
- MINX(ミンクス)
- SHIMA(シマ)
- ALBUM(アルバム)
- AFLOAT(アフロート)
- LIPPS(リップス)
- air(エアー)
- ZACC(ザック)
- TAYA(タヤ)
- OCEAN TOKYO(オーシャントーキョー)
- KAKIMOTO ARMS(カキモトアームズ)
目安としては、「カタカナ表記したとき5文字以内で発音できる」店名が覚えやすいと言われています。
発音しやすく、聞き取りやすい名前にする
発音しやすく聞き取りやすい、というのも実務上かなり重要です。
電話予約を受ける際を想像してみればわかると思いますが、自分またはスタッフが噛んでしまうような名前や、聞き取りにくくて電話越しで聞き返しが発生しやすいような名前は避けたほうが良いでしょう。
名前だけで美容室だとわかる
必須ではありませんが、店名の前に「冠」をつけると美容室だとわかりやすくなります。
冠というのは以下のようなものです。
- 「美容室〜」
- 「ヘアサロン〜」
- 「ヘアデザイン〜」
- 「ヘアスタジオ〜」
- 「カット&パーマ〜」
- 「髪質改善美容室〜」
- 「髪と着付の専門店〜」
冠がないほうがスッキリと洗練された印象にできますが、つけることで「美容室である」とひと目でわかってもらうことができます。
また、「髪質改善美容室〜」や「髪と着付の専門店〜」と言った冠をつけることで、店の強みをアピールすることもできます。 店のイメージやコンセプト、地域柄などを踏まえて冠をつけるかどうか、どんな冠をつけるのか考えてみると良いでしょう。
近隣の他店舗や有名店と紛らわしいような名前を避ける
開業する店舗の周辺を考えたとき、似た名前の店舗があるのなら紛らわしくなるしネット集客でも不利になるのではっきり区別できるように工夫をした方が良いでしょう。
例えば、自分の名前をとって「ヘアアトリエTAKU」としたいと思っても、すぐ近くに「ヘアアトリエTAKI」という店舗があったとしたらどうでしょうか?
あるいは「髪質改善美容室Flower」の近くに「髪質改善美容室FLOW」とかで開業するのもあまり良いとは言えませんよね。
また、近隣店舗だけでなく有名店と似た名前にするのも避けた方が良いでしょう。
ネット集客で不利にならない店名にすることも大切
やはりいまどきの美容室経営では、ネット検索からの集客を考えることも重要な要素です。 したがって、検索されにくい名前をつけてしまうことは避けた方が良いと言えます。
例えば、有名美容室である「air」ですが、この名前だけでGoogle検索上位にホームページが表示されるでしょうか? 実際に検索してみればわかりますが、「Macbook Air」「Softbank Air」「マットレスは西川のAiR」などなど、強い競合がたくさんいて1ページ目には表示されませんよね。
それに対して「SHIMA」とか「MINX」、「OCEAN TOKYO」ならどうでしょうか? 当然のように検索1位に表示されますよね。
このように、お客さんがネット上でホームページやHOT PEPPER BEAUTYのサロンページをすぐに探せる名前になっていた方が有利です。
具体的には、「TAYA」「SHIMA」などのように自分の名前からとったり、「MINX」のようにありふれてはいない英単語等を使うのも良いですし、好きな単語4つの頭文字を繋いでみたり、理念やコンセプトから造語を作ったりするのも良いですね。
オリジナリティのある名前は覚えてもらいやすい上に検索にも強くなるのでおすすめです。
自分が愛着を持てることは何より重要
ここまで色々と解説してきましたが、最後はやっぱり「自分が納得し、愛着を持ったお店の名前にすること」が何より重要です。 自分がつくりあげていく自分のお店なんですから、当たり前ですね。
本当は「これにしたい!」って名前があったのに「読みにくいし長いから」とか「ネットで検索されにくそうだから」とか、その他の要素を意識しすぎてやめてしまったり、変に集客のことばかり考えて余計なような気がしつつも「髪質改善美容室」って冠つけてみた、とかしてしまうと後悔してしまうこともあります。
後になって店名変更を考えるくらいなら、はじめから後悔しないようにしたい名前にしてしまうのがいちばんです。
最終的には自分が愛着を持てる名前にするようにしましょう。
店名を考える上で参考にしたい!!有名美容室の名前の由来
さて、名前の付け方のポイントを理解したあとは、実例から学んでいきましょう。 あの有名美容室はどのような理由でその名前になったのでしょうか?
カリスマ美容室として時代を牽引した高橋マサトモ率いる美容室『MINX』はアメリカ英語の英単語minxをそのまま店名にしています。 以下は、MINX公式サイトによる名前の由来についての引用です。
MINXとは、アメリカ英語で「おでんば娘・生意気な女の子」という意味を持っています。この言葉を店名に冠した理由は、すべての女性に魅力を届けたかったため。
「おてんば娘というのは、ただ単に生意気なだけじゃなく、何かしらの影響力を持っているもの。世界中のすべての女性が自分というものを持ち、まわりに楽しい影響を与えるような”主役”になってほしい。そうした意味が込められています」
—高橋マサトモ
出典 : What MINX is
このように、創業者自身の思いを込めた英単語やフランス語などをそのまま店名にするのも一つです。
30年以上時代の最先端を行き続ける超人気美容室『SHIMA』は嶋英憲氏と嶋義憲氏の兄弟で経営されています。 兄弟の名前からわかる通り、店名の由来は創業者自身の名字ですね!
SHIMAだけでなく、チェーン展開されて有名な『TAYA』も創業者である田谷哲也氏の名前を冠しています。
執行役員でメディア露出の多い木村直人氏が有名な美容室『air』の店名は、以下のような願いを込められてつけられています。
air(空気)とは色や形もありませんが
人間にはぜったいなくてはならない存在です。
そんな空気のようにお客様の生活スタイルの一部に
溶け込めるような美容室を作りたくてairと名づけました。
私達が考えるairは人間が夢を見続けることで、
どんな形にもなりどんな色にも染まり何度でも生まれ変わる空気。
そんな空気と最高な雰囲気、サービス、 そして技術をお客様に
提案していくのが私達の使命です。
出典 :airの由来
フランチャイズや面貸しなども行い全国に広くチェーン展開・グループ展開をしている『EARTH』はどのような名前の由来なのでしょうか?
[EARTH]のロゴマークは”E”がくし、”H”がハサミを表しています。どちらも美容室には欠かせないものです。コームとハサミの間に”ART”が挟まれている。つまりコームとハサミでアートを作るとういうメッセージが込められています。
出典 : Buzip – 株式会社アースホールディングス
あの有名なEARTHの社名には、実はそんな意味が込められていたんですね! このような遊び心があると人から覚えてもらえる店名にもなりますね。
関東で広くチェーン展開している美容室『Ash』の名前の由来を知っているでしょうか? ヘアカラーのアッシュ? とか思うかも知れませんが、実は飼っていた飼い猫の名前だそうです!
創業会長の昔からの弟子の
フランチャイズオーナーが
飼っていた猫の名前なのです。
出典 : Ash“アッシュ”の名前の由来
しかも、創業者自身の飼い猫ですらないとはびっくりですね。 これだけ大きくチェーン展開まで成功した美容室ですらあまり深い意味なくサロン名をつけていることもあるので、細かいことにこだわりすぎるのもよくないかも知れませんね。
まとめ
- 商標登録の確認は店名決定の大前提
- 読みやすく、覚えやすい名前にする
- ネット集客で不利にならない店名にする
- 何より重要なのは自分が愛着を持てること
自分の理想が詰まったお店です。 お店の名前までこだわって、愛着の湧くものしたいですよね。 ここは十分に時間をかけて、納得いくまで検討しましょう!
次回は「お店のコンセプト」について考えていきます。この連載が少しでもあなたの開業の手助けになれば幸いです。