【Vol.11】美容室経営に税理士・会計士は必要?

数回にわたってお伝えしている通り、美容室独立開業をしたら会計・税務に関することは避けて通れません。

ところで、美容室によって税理士や会計士と契約しているところもあれば、依頼せずに自分でやっている方もいます。どちらが良いのでしょうか?

というわけで、この連載第11回では「美容室経営に税理士・会計士は必要?」というテーマで気になる疑問にお答えして参りたいと思います。

一緒に勉強していきましょう。

そもそも税理士・会計士って何をする人? 依頼すると何をしてくれるの?

本題に入る前に、そもそも税理士や会計士って依頼すると何をしてくれるのでしょうか? 少し確認しておきましょう。

美容室オーナーが依頼するのは税理士! 税理士と会計士の違い

まず、税理士会計士がどう違うのか確認しておきましょう。

まず、個人であれ会社組織であれ、依頼すべきなのは「税理士」です。税理士と会計士の業務には以下のような違いがあります。

  • 税理士 : 相談者の立場で税務業務を引き受ける
  • 会計士 : 第三者の立場で監査業務をする

確定申告などの税務業務を依頼するべきなのは上の通り税理士の方なのです。

ただし、公認会計士兼税理士をしている方もたくさんいますので、そのようなこともあり少々わかりにくくなっているのです。

税理士に依頼すると何をしてくれるの?

税理士は国家資格を持った税務のプロです。 税理士には以下のような業務を依頼することが可能です。

税務書類の作成代行

税務署へ提出する各種書類の作成を代行してくれます。

税務代理

依頼主の代わりになって確定申告や企業の決算手続きを行ってくれます。

税務相談

依頼主の税金対策についての相談に乗り、アドバイスをしてくれます。

融資相談

創業融資などを受ける際、融資審査に通りやすくなるようアドバイスをもらえます。書類作成の代行なども依頼できます。

当然ですが、多くのことをしてもらうほど費用がかかります。しかしお金さえ支払えば税務に関することのほとんどを任せることも不可能ではありません。

美容室経営に税理士は必要?

税理士に依頼することで、美容室経営で必要な「会計・税務に関する負担」をかなり軽減することができます。節税や補助金などの相談もできますので、非常に心強いです。

税理士に依頼するべきかは人によって事情が異なります。 

  • 自分で青色申告の必要書類を作成できるか?
  • 節約を重視するか? 手間を省くことを重視するか?

このあたりが依頼すべきかの判断基準となるでしょう。しかし、筆者としては税理士へ依頼してしまう方がおすすめです。 

自分で青色申告の書類作成を全て行うことに不安があるのでしたら、税理士に依頼する方が良いでしょう。また、自分でできたとしても手間がかかりすぎると思うなら依頼してしまった方が良いかもしれません。

また、税理士に依頼して継続的なお付き合いがあれば、節税のアドバイスが受けられたりお得な補助金制度を教えてもらえたりもします。 

逆に、自分だけでうまく節税しようと思えばそれなりの勉強が必要です。

もちろん勉強するのも一つの選択肢ではありますが、もし美容室を発展させていきたいと思うのならその勉強時間を美容についての知識・スキル向上当てたり、経営戦略を考えた方が発展にはつながるでしょう。

特に規模が大きくなれば売上も経費も金額が大きくなり、それだけ税務の手間も増えてきます。

拡大を目指すのならいずれは税理士を入れる検討をすべきかと思いますので、それでしたら早めにプロへ依頼してしまった方が良いでしょう。

税理士に依頼するメリット・デメリット

以上のように、税理士へ依頼には大きなメリットがあります。

では、判断しやすいようにメリットとデメリット、そして注意点をまとめてみましょう。

メリット

税理士へ依頼することで以下のようなメリットを受けることができます。

  • 会計・税務について、自分が何をすれば良いのかがハッキリする
  • 税務関連の負担・手間が大幅に軽減するため、他のことに時間を回せる
  • 申告書類作成の代行をしてもらえる
  • 節税や補助金などのアドバイスが受けられる
  • 運営や収支についての相談ができる

実際のところ、最近は会計ソフトも便利になっていますので、少し勉強すれば簡単に確定申告くらいはできてしまいます。

ですが、税理士への依頼はそのような実務面以上のメリットがあるのです。

税理士へ依頼する何よりのメリットは、「税金周りの心配事を解消できる」「税務の手間を大幅に軽減できる」ということでしょう。

税務について独学しても、「これって経費にしても大丈夫なのかな?」などの疑問は常に浮かんでくると思います。また、実際グレーゾーンな部分があるのも事実でしょう。

やはり独学で税務を行う限り、勉強や情報収集は絶えず必要なのです。

そのような心配事を簡単に解決できることこそ、税理士へ依頼する何よりのメリットです。何かわからないことがあっても税理士に相談すればプロの正確な回答をすぐに得ることができます。

また、確定申告書類も確実なものを作成してもらうことができます。余計な手間がないのです。

そのため、集中して美容室経営や事業拡大に専念できるのです。

デメリット

それでは、税理士へ依頼するデメリットはどんなものがあるでしょうか?

デメリットはわかりやすくこちら。

  • 費用がかかる

この1点につきます。税理士費用は依頼内容によって大きく変わります。

顧問契約の場合

まず継続契約して様々な相談もできる「顧問契約」の場合です。

個人事業主で売上が1,000万円未満であれば、相場としては年間300,000〜500,000円程度といったところでしょう。もちろん依頼範囲によって変わります。また、売上高が多くなれば税理士費用も高くなります。

法人ならもっと高額になります。売上が1,000万円未満であっても300,000円以上はかかってしまいます。

そのため、これだけの費用に見合っただけの活用ができるかどうかがポイントです。

スポット契約の場合

顧問契約ではなく、確定申告時だけ契約するスポット契約という依頼の仕方もあります。

例えば、普段から自分で現金出納帳などは用意しておいて、確定申告前になったら仕訳と必要書類作成だけお願いするというような依頼の仕方です。この場合なら、費用は100,000円程度から依頼できます。

ただし、日々の相談などはできないため、税務に関する知識がそれなりに必要です。

そのため、結局のところ税理士へ依頼するメリットがあまり得られず、これだったら自分で申告までやった方が良いという気もします。

基本的には依頼するなら顧問契約をお勧めします。

注意点

デメリットで見た通り、税理士へ依頼するとそれなりの経費がかかります。

したがって、費用に見合っただけの活用をしなければただただ経営を圧迫してしまいます。税理士へ依頼するのであれば、以下の2点を注意する必要があります。

  • 税務周りのことを何もしないでいいわけではない
  • 自分にあった税理士を探す必要がある

税務周りのことを何もしないでいいわけではない

いくら税理士へ依頼したからと言って、会計・税務に関する全てを丸投げできるわけではありません。

まず、当然ですが必ず「売上票やレシート・領収書などの管理」はしておかなければなりません。

税理士さんに帳簿作成を全てお願いするつもりだとしても、それを作成する元となるデータがなければどうしようもないからです。

また、税理士費用を抑えたいなら「現金出納帳の作成」くらいは自分で行うと良いでしょう。これは前回の記事でも解説した通り、お金の流れを把握し、会計のミスや不正などがないかのチェックにもなりますので、そのような面からも自分で行うべきです。

全て丸投げにしてしまうと経営状況を掴みにくくなりますので、最低限のことは自分で行う意識を持っておきましょう。

自分にあった税理士を探す必要がある

税理士との顧問契約をするなら、自分にあった税理士を探すべきです。税理士にも分野によって得意・不得意があります。企業相手の契約を主としている税理士、個人経営の小さいお店を主な取引先としている税理士、様々です。

できることなら、自分のお店と同程度の規模を持った美容師の顧客を多く持っている税理士と契約するとベストでしょう。

また、税理士との顧問契約では「なんでも相談できるか?」は重要なポイントと言えるでしょう。費用なども気になるポイントだとは思いますが、それ以上に人柄なども含めて「信頼できるかどうか」を判断の軸にすると良いでしょう。

税理士に依頼するのがおすすめの方

それでは以上を踏まえて、税理士にお願いすべきなのはどんな方なのでしょうか?

以下に当てはまるような方は税理士と顧問契約するのがお勧めです。

  • 法人の方
  • 税務に自信がない方
  • 年商1,000万円を超える方
  • 事業を拡大したいと考える方
  • 理などにできるだけ時間をかけず、事業に専念したい方

法人の方

法人の方は税理士と顧問契約を結んでおくのがお勧めです。 理由は、こちら。

  • 法人の決算手続きは面倒
  • 売上や従業員数などが多くなるほどやるべきことが増える
  • 顧問税理士を持って事業運営や節税の継続的な相談が大切

などです。

個人経営ではなく会社組織にしたからには、事業拡大を考えているのかと思いますので、それを早く達成するためにも信頼できる税理士と顧問契約を結び、相談しながら事業運営を行いましょう。

税務に自信がない方

どんなに小規模な個人店であっても、自信がないのなら顧問税理士をつけておくのがお勧めです。そうすることで税金に関する悩みを相談でき、アドバイスを受けながら事業を行うことができるからです。

苦手な経理・税務のことにあまり時間をかける必要がなくなりますし、ミスも防げます。

年商1,000万円を超える方

年商1,000万円を超えると消費税を納める必要が出てきます。こうなると必要な作成書類も増えますので、この規模にまでなったのなら顧問税理士をつけることがお勧めです。

個人事業の場合、はじめは自分で確定申告するのも一つの選択肢ですが、年商1,000万円を境に税理士への依頼を検討すると良いでしょう。

今まで活用できていなかった税金対策なども見えてきて更なる利益向上につながることもあります。

事業を拡大したいと考える方、事業に専念したい方

今はまだ売上が小さかったとしても、これからどんどん事業を拡大していきたいと考えるなら初めから顧問税理士をつけてしまうのがお勧めです。

そうすることで会計・税務に余計な手間・労力をかける必要がなくなり事業に専念できますし、事業拡大に向けた相談をすることもできます。

また、新店舗のオープンなどを考える際は融資の相談も可能です。

最速で事業拡大していくことを考えるのなら、やはりお金のことはお金のプロに任せるのがベストなのです。

コラム|事業拡大を考えていても、初めのうちは自分で確定申告するのもアリ

基本的には事業拡大をしていきたいのならどこかのタイミングで税理士との顧問契約をすべきだと思いますが、まだ事業が成長する前は自分で確定申告をするのもアリかもしれません。

自分で確定申告をしようと思えば最低限の税務に関する知識を一通り覚えることになります

そうするとお金の流れが把握でき、帳簿の見方も理解できます。節税などの知識もつくでしょう。

これらの知識・感覚は経営の中でも活かせるものになりますので、事業拡大するまでの最初のうちは自分で確定申告をするのも一つの選択肢です。

事業が軌道に乗るまでの苦しい時期の節約にもなるので考えてみると良いかもしれません。

税理士に依頼しなくても良い方

それでは逆に、税理士に依頼しなくても良いのはどんな方でしょうか?

以下のような場合は依頼しないでも良いかと思います。

  • 特に事業拡大などは考えていない
  • 地域密着の個人経営として身の丈にあった経営をしたい
  • 毎日コツコツと帳簿付けすることが苦ではない
  • 簿記3級程度の知識を持っている
  • 会計ソフトを使いこなせる

以上のような項目に全て当てはまるような人は税理士に依頼しなくとも、自分で確定申告をした方が良いでしょう。

なお、簿記3級程度の知識は1〜2ヶ月それなりに勉強すれば独学で得ることができます。

会計ソフトもパソコンが苦手でなければさほど難しいものではありません。

事業拡大せず、自分のお店として自分のペースで経営をしたい方にとっては税理士費用は安いものではありませんので、少し勉強して自分で確定申告をするのがお勧めです。

まとめ

以上、今回は「美容室経営に税理士・会計士は必要?」というテーマで解説いたしました。今回の内容をおさらいしておきましょう。

  • 美容室経営は基本的に税理士との顧問契約がお勧め
  • 顧問契約をすることで、以下のようなことをしてもらえる
    -確定申告書類の作成代行や手続き代行
    -税務や事業運営、資金繰り、融資などの相談
  • 顧問税理士の依頼費用は年間30万円以上。事業規模によって変わる
  • 地域密着の身の丈にあった経営を考えている方は自分で確定申告するのもアリ

以上の通り、事業拡大を考える経営者にとって顧問税理士は強い味方です。ぜひ検討してみると良いでしょう。

次回からは話題を変え、【物件探し】について解説していきます。第12回は「美容室経営の成功は不動産選びが8割」でお送り致します。

この連載があなたの美容室開業の助けになれば嬉しく思います。