【Vol.18】不動産の種類と訪問の前準備 | 不動産の種類と店舗探しのコツ

ー美容室経営成功の鍵を握る、不動産選定

独立開業したサロンが成功するか否か、70%以上を決めると言われる「不動産選定」。本連載では前回より不動産屋などを利用して物件を探していく具体的な方法について解説しております。

前回は物件探しの2つの方法を紹介し、それぞれのメリット・デメリットや選び方などを解説いたしました。

【Vol.17】物件探しの2つの方法 | 不動産屋で探す・内装屋に依頼する

今回から数回にわたり、不動産屋を使って物件探しをするにあたり知っておくべきことを具体的に解説していきます。

不動産の種類や不動産屋の専門分野は様々

ひと口に不動産屋と言ってもいろいろなタイプがあります。まずは簡単に不動産屋の種類について解説していきましょう。

不動産屋の種類は、次の2つの切り口で分類することができます。

  • 販売形態による不動産屋の分類
  • 取り扱い物件の種類による不動産屋の分類

1. 販売形態による不動産屋の分類 | 賃貸メイン・販売メイン

不動産の販売形態には賃貸と販売の2種類があります。そして不動産屋も賃貸物件メインなのか、販売メインなのかと言った違いがあります。

開業にあたり物件探しをしている方の多くは、賃貸物件による営業を考えていると思います。そのため、賃貸物件メインの不動産屋を訪問する必要があります。

何も考えずに訪問しても「うちはマンション販売専門なので・・・」と言ったことにもなりかねないので注意しましょう。

2. 取り扱い物件の種類による不動産屋の分類 | 住宅・店舗・事務所・駐車場

別の切り口では、取り扱っている物件の種類により分類することもできます。不動産には戸建て・マンション・店舗・事務所・駐車場と言った種類があります。

販売形態と同様、やはり不動産屋も住宅メインの不動産屋、事務所メインの不動産屋などがあります。店舗を取り扱っていない不動産屋も多く、街で見かける不動産屋の多くは賃貸住宅専門です。

闇雲に回っても無駄が多くなってしまいますので、あらかじめ確認してから訪問した方が良いでしょう。

不動産屋の種類から抑えるべき効果的な不動産屋回りのポイント

前章で見た不動産屋の種類を踏まえると、あらかじめ訪問前の下調べをしておくべきだと言えます。

効率的な不動産屋周りをするため、前準備として次の2点をしっかり抑えておくと良いでしょう。

  • 「訪問リスト」を作成しておく
  • 「希望不動産シート」を作成しておく

詳しく解説していきます。

1. 「訪問リスト」を作成しておく

闇雲に不動産屋を回るのではなく、まずは「訪問リスト」を作成しておくことで効率的な不動産屋周りをすることができます。

賃貸の店舗物件を探すのであれば、その形態を取り扱っている不動産屋を下調べしてリストにすると良いでしょう。

地域・路線ごとにまとめておき、実際にフィールドワークに出る際は無駄のない訪問ができるようにあらかじめ準備をしておきましょう。

2. 「希望不動産シート」を作成しておく

「希望不動産シート」とは、こちらが求める物件のスペックを記載した紙です。具体的には、次のような内容をまとめておくと良いでしょう。

  • 希望エリア
  • 坪数
  • 予算範囲
  • 最寄駅からの距離
  • 階層
  • 通りに面しているかどうか

つまりは、主に連載12回の「美容室開業における不動産選定の重要性」で紹介した「候補となる物件の選定のポイント」でまとめたような内容です。

それをベースにして、その他に自分にとってどのような内容が必須なのか考え、記載しておくと良いでしょう。

希望不動産シートを作るために考えるべきことは、まさに連載の第12回から第16回までに見てきたことです。具体的によく考えておかなければ最適な物件探しは難しいので、しっかり考慮した上シート作りをしておきましょう。

このようなシートをあらかじめ作っておくことで、次のようなメリットがあります。

  • 不動産屋と効率的に話が進められる
  • 万が一訪問した不動産屋が賃貸店舗を取り扱っていなくても、このシートを渡しておけば情報の連絡をくれることもある

不動産業界にはツテがありますので、具体的な希望がわかっていれば探してくれることもあります。

せっかく時間をかけて自分の足で訪問までしたご縁ですので、ただ何もなく帰るのではなく大切にすると良いでしょう。

所有者や管理者による不動産の分類 | 自社物件・管理物件・オーナー物件・他社物件

1章で見たのとは違った観点から不動産を分類することもできます。

それが物件の所有者・管理者による分類です。不動産屋からみて、不動産は所有者・管理者により次の4種類に分類できます。

  • 自社物件
  • 管理物件
  • オーナー物件
  • 他社物件

詳しく解説していきます。

1. 自社物件・管理物件・オーナー物件・他社物件の違い

それぞれの違いを表でまとめます。

自社物件その不動産屋が所有している物件
管理物件その不動産屋がオーナーに管理を委託されている物件
オーナー物件どこの不動産屋にも管理委託されていない、オーナー自身で管理している物件
他社物件他の不動産屋が管理している物件

不動産業界は共有データベースを持っており、他社やオーナー自身で管理している物件も情報を持っています。しかしながら、物件を借りる側からするとこの分類による違いは大きな違いとなります。

2. 狙い目は自社物件や管理物件

結論から言うと、狙いやすさは想像通りかもしれませんが【自社物件>管理物件>オーナー物件 > 他社物件】となります。不動産屋からしても、自社物件を借りてもらえるのが一番利益率が高く、ありがたい話な訳ですので、より積極的になります。

また費用・契約内容についての自由度も高くなるわけです。

狙い目は自社物件または管理物件、せいぜいオーナー物件までで、他社物件を狙うよりその物件を管理している不動産屋へ直接行った方が良いでしょう。

不動産の種類から見る不動産探しのコツ

前章で見た通り、不動産屋に訪問した際に狙うべきは「自社物件または管理物件・オーナー物件」です。わざわざ他社物件までデータを引っ張ってきてもらうのはあまり得策ではないわけです。

もっと詳しく物件探しのコツを見ていきましょう。

1. プロが教える物件探しのコツ

物件探しの不動産屋さん自身が物件を探すならどのように探すのかと聞いてみたところ、「解約予定の自社物件を狙う」とのことでした。参考にしてみると良いでしょう。

前述の通り、自社物件は最も狙い目で、不動産屋としてもできるだけ契約に漕ぎ着けて空きを埋めたいところです。より良い商談が進みやすくなります。

特に、これから空き物件となることが決まっている解約予定の自社物件に次の借り手が決まっていれば、不動産屋としては家賃収入が途切れずありがたいわけですから、最も狙い目なのです。

2. 解約予定物件を探す方法

それでは、どのようにして解約予定物件を探せば良いのでしょうか?

店舗や事務所の場合、一般の住居と異なり解約は3~6か月前に管理している不動産屋に通知する必要があります。そのため、多くの物件を管理している、または多くの物件の契約に携わっている不動産屋は、空き情報に関する情報を素早く得る事ができます。

したがって、直接不動産屋に足を運ぶことで、ネットにはまだ出ていないような空き予定の物件を紹介してもらうことができます。

自社物件を多く持っている不動産屋、または店舗に強い不動産屋に数多く回るようにし、さらに言えば 定期的に訪問して交流を持っておくと良いでしょう。

まとめ

以上、今回は「不動産の種類と訪問の前準備」について解説いたしました。今回の内容をおさらいしておきましょう。

  • 不動産屋によってメインで取り扱っている販売形態や物件の種類に違いがある
  • 不動産の所有者や管理者も物件探しにおいて重要な要素
  • 訪問前に事前調査して「希望不動産シート」と「訪問リスト」を作っておくことが不動産屋まわりの効率化のコツ
  • 不動産屋に訪問した際は「紹介できる自社物件や管理物件、またはオーナー物件の店舗」はないか話を聞くと良い
  • 管理物件の多い不動産屋、または多くの店舗の契約に携わっている不動産屋には定期的に訪問して交流を持っておくと良い物件に出会いやすい

簡単にまとめると、物件探しのコツは「事前準備をしっかりして不動産まわりを行い、良い不動産屋とは定期的な交流を大事にする」ということです。

このようなポイントを抑えた不動産屋まわりを続けることで、自分にとって理想的な良い物件に巡り合える可能性は大いに高まるでしょう。

次回は「不動産屋訪問の目的」について解説いたします。

この連載があなたの美容室開業の助けになれば嬉しく思います。