自分のやりたいことが伝わる投稿で、見ている人たちに“共感”を
「やりたいことをやってみる」、これが谷口さんの人生観なんですね。
多くの美容師やヘアメイクが、幼い頃や学生時代に「なりたい!」っていう夢を抱いてこの世界に入ってきたはずです。私もそのひとりですし、その気持ちを持ち続けたいということはあります。
ですが、「美容師がやるSNS」ってなるとどうしても集客だったり、ビジネス的なアプローチになってしまう。私はそうでなかった、そうしたくなかったんですよね。実際にインスタを始めた頃はプライベートばかりでしたし…(笑)。
プライベートも「自分のしていること、興味あること」を載せるという点では同じ感覚ですよね。それが、今のようなメイク中心の「やりたいこと」へと変化していくんですね。
はい。インスタは2012年くらいだったかな、それこそ開始早々に登録をしたんですけど、人生のセカンドステージとしてヘアメイクもやっていこう!って決めた頃から今のスタイルを続けています。ここ数年は特に「自分のやりたいこと」をしっかり伝えていこう、と。
谷口さんの投稿を見ていると、写真の“構図”が気になって…。美容師さんのインスタってやっぱり“髪型”にフォーカスを当てる必要があるので、ヘアカタログのように左右天地に余白を作って全体像を見せることが通例だったりしますが、谷口さんは頭切りするほどの“寄り”の構図。これにはこだわりがあるんですか?
おっしゃるように普通はカタログっぽい写真が多いんですが、これも私のやりたいことのひとつで髪型とメイクのバランスに加えて、表情や仕草も感じてもらいたくて。
女性の綺麗さや可愛さって、どれかひとつをとってOKではないと思うので、トータルで「あ、かっこいい」とか「え、可愛い」って思ってもらえるような一枚画にしたくてこうなりました。
「私、こういう髪型が作れます」ではなく、「私、こんな女性が好きです」というニュアンスが画像から伝わります。だからこそ、そこに共感してくれる女性がいるんですね。
そうですね。そうだといいな、って思います。
もちろん「私、こういう髪型が作れます」は大事なことですが、もうプロとしてお金をいただいてサロンワークをしているわけですから、技術があるのは大前提だと思うんです。だったら、同じような女性像が好きな方や、私の好きなメイクやヘアアレンジを試してみたいという女性と繋がれたりすることが大切なのかなって。
その共感の和がサロンのお客様をはじめ、美容やファッション系のブランドや制作の人へとどんどん広がっていっているんですね。
先ほどは「(インスタを)集客ツールとしては思っていない」というようなお話でしたが、結果としてサロンの新規集客にも繋がっているのではないですか?
実際に私の投稿を見て、「このメイクをしたいので似合う髪型にしたい!」というようなコメントをいただいてサロンに来てくださるお客様もいらっしゃいました。ですが、集客という点ではサロン自体にちゃんとその力があるので、本当に集客を目的には考えていないんです。というか、心配していない、の方が正しいですかね。
お店として基盤となる集客能力があるからこそ、谷口さんはやりたいことを発信できるわけですね!
もう少し投稿方法についてお伺いしたいのですが、撮影方法や使用しているアプリについても教えていただけますか?
写真投稿は「Foodie」で撮影して、「BeautyPlus」と「Lightroom」を使って編集しています。あまり強い加工は好みではないので、あくまで自然に、それでいてメイクやヘアがきちんと伝わるように少しコントラストを調整する感じです。リール動画は「VLLO」を使っています。
アプリでやっているとは思えない、雑誌やカタログなどの1ページを切り取ったような完成度の高さですよね。写真のバランスや加工などは何か参考にしているんですか?
投稿のために何かを参考に…とは思っていないんですが、雑誌ではFIGAROやSPUR、あとは海外のポートレートが好きなので、そこから影響されているとは思います。
あとは美容師とヘアメイク、ふたつのお仕事の中での経験や学びから来ているものもありますね。
「やりたいこと」を発信するとどうしても“自己満足”感が出てしまいがちですが、谷口さんの投稿は客観性も持ち合わせているように感じます。谷口さんご自身の写真が少ないのもあるかも知れませんね。
セルフプロデュースではあるんですが、自分自身にフォーカスを当てるよりもやっぱり「作ったものがいい」って思ってもらいたいんです。
これは性格でもあるかと思うんですが、私は裏方気質で…。私よりもヘアやメイク、メイクグッズ、あとはモデルさんやタレントさんだったりが評価してもらえる方が良くて。その結果、作り手である私を知ってもらえたらより良いかなって思っています。
谷口さんは他にサブアカウント(@tanimido_hair)も運用されていますが、メインアカウントとは異なる位置付けで始めたんですか?
そうですね!メインの方では私の“好き”を中心にヘアやメイクをアップしていますが、サブではヘアのノウハウや知識を投稿しています。
先ほど「技術があるのは大前提」ってお話ししましたが、そこをマジメに伝えてみようと思って去年作りました。
確かにメインは“感性的”ですが、サブはどちらかというと“論理的”ですね。テキストのように作り込まれていますが、こちらはこちらで作るのが苦労しそうです…。図解なんかは一から作ったんですか?
イラストは弊社の代表が出している本から引っ張ってきて、それを加工して編集して…。思っていたよりもずっと大変でした…。途中でどうして始めちゃったんだろうって後悔したことも(笑)。それでもとりあえずはやり切ろうと、一通りは完成させました。
教科書的な内容ですから、一度作ってしまえば情報としてずっと役立ちますもんね。
サブアカウント含め、谷口さんの今後のインスタ活用の展望はなんでしょう?
まずメインアカウントでは、引き続きメイクを中心に私の“好き”を伝えていくつもりです。その中で新しい撮り方だったり、コンテンツ、あとはヘアケアやスタイリングなどもアイテムと一緒に紹介していけたらと思っています。
サブはベースを作ったのでいったん放置で…(笑)。今後、さらにお客様に伝えられる知識や情報が増えたら更新していきます!
最近のインスタ術といえば「いかに自分を引き立たせるか」ということに注目されがちですが、谷口さんのように自分の“好き”や“やりたい”を継続することがいかに大切かを改めて教えていただけたインタビューでした。
そして、“好き”や“やりたい”を胸に行動し続ける姿に、人は惹かれたり共感したりするんですよね。しかも、ひとつひとつの行動や言葉の向こう側には常に“見てくれる人”や“お客様”がいる。ここを大切にする谷口さんだからこそ、二足のわらじを成功させ、ファンも自然と増えていくのでしょうね。
- ベースメイク
肌作りでその他のメイクの印象が変わるから、瑞々しい雰囲気にしたければ艶感を出すベース。少しモードっぽい雰囲気ならセミマットなベース、等。 - 眉
「形や色」で持っていきたい雰囲気や印象が変わるから。
- やりすぎないこと=足し算しすぎない
濃い、濃い、濃い!全部濃い!とかにならないように引き算することを意識。 - モデルさんに似合わないであろう「色味や雰囲気」に無理してもっていかないこと
「明らかにコンサバ顔」みたいな子に「めちゃくちゃPOPな感じに!」とか、「ザ、イエベオータムさん!」みたいな子に「めちゃくちゃ韓国っぽいメイク」とかはNG。逆に、「本当はこの子はこんな感じの方が似合うんじゃないかな〜」っていうお顔立ちを見極める場合もある。 - 髪、ファッションとのバランスを考える
メイクがしっかりならヘアは凝りすぎない、ファッションが派手ならメイクは控えめ等、3つのバランスをとること。
お顔に発色いい絵具?みたいな質感で描いたりする「アート系」。
- SUQQU
パレットのパールが本当にきれい!!!若すぎずに大人女性にぴったりの質感で「大人モード」な雰囲気が作れる。 - ZARA beauty
最近ZARAからデビューしたコスメライン。カラーバリエーション豊富かつ、発色がよくて値段もお手頃!旬な色味も揃っている。 - ローラメルシエ
クッションファンが本当に良い!薄付きなのにこれ一つでびっくりするくらい毛穴等もカバーできる!
コンサバや生っぽい質感の時は、岡田知子さん。
モードな時は、udaさん。
一生ずっと好きなのは石川ひろ子さん。
あとは海外のエディトリアルを見る。
ほとんど独学です。ただヘアメイクアップアーティストの方に1年ほどアシスタントにつきました。その他は本当にいろんな物を「見る、見る、見る」とにかく見ます。見てイメージする事が大事。頭の中で色味のバランスとか、自分の顔で試します。
スキンケア〜メイク、ヘアまで1時間くらい。
“使用するアイテムの中でどれを一番主役にするかを考える“こと。あと、ただのせるだけではなくてメイクも「髪をカットするのと同様に繊細さが必要」だと思うので、”ブラシを使い分けて細かいところまでこだわって濃淡をつける“といいかもしれません。(個人的に指でつけるのがあまり好きじゃない)
でもやっぱり「技術は回数重ねれば自然とついてくる」と思うので、その“技術の根源となる引き出しを増やすこと”が一番大事なことかもしれないです。「顔立ち、肌の色、色味、ファッションとのバランス」を考えながら、どんなことを伝えたいのか、しっかりイメージを固めてつくるといいと思います。
【谷口 翠彩(たにぐち みどり)】
専門学校を卒業後、2009年に「k-two」に入社。2011年に銀座店へと異動し、そこから副店長、店長とステップアップ。サロンワークをしながら、学生時代より抱いていたヘアメイクの夢を叶え、2年ほど前からフリーとして本格的に活動を開始。現在は雑誌や広告、ファッション系のルックブックなどを手掛けている。著名人のファンも多く、最近では滝沢カレンさんや弘中綾香さんなどのヘアメイクも投稿され、人気を集めている。