【Vol.35】保存版!美容所開設届って?成功するコツ教えます|開業手続き後編

前編では、主となる税務署へ提出する書類を中心に解説しました。後編は、保健所、年金事務所など関係各所へ、それぞれ必要な書類を提出しなければなりません。

まずは、美容室開業のために必要不可欠な美容所開設届をメインに詳しく解説していきます。

保健所に提出する書類

美容室を開業するためには、使用する店舗を「美容所」として登録する手続きが必須となります。その一連の手続きが、「美容所開設届」で、窓口は保健所です。

MEMO

開設届の書式は保健所の窓口やホームページで入手できます。

美容室を開業するためには、店舗所在地を管轄する保健所に「開設届」を提出し、構造設備等について基準を満たしているかどうか検査を受けます。

書類提出から検査結果が出るまでには、2週間前後かかるので、オープン予定日から逆算し余裕をもって手続きをしましょう。

注意!

もし、「美容所開設届」を提出せず、立入検査を行わないまま営業を開始してしまった場合、美容師法により事実が判明した時点で30万円以下の罰金が科せられ、営業停止処分となります。

添付書類は保健所により異なりますが、次の書類は必須です。

保健所に提出する書類

  • 開設に関する届出の申請
  • 開業届
  • 施設平面図(主要設備が記載されたもの・ビルに入居する場合はフロア配置図)
  • 施設への案内図(地図)
  • 理・美容師免許証(原本)
  • 管理美容師、管理美容師資格認定講習会修了証(原本)(従業員2名以上の場合)
  • 健康診断所(理・美容師のみ)
  • 登記事項証明書(法人申請の場合。原本の提出、もしくは原本の提示および写しの提出。)
  • 国籍が明記された住民票の写し(外国人がオーナーの場合)
  • 手数料

開設届には開設者(オーナー)の住所・氏名・電話番号の他、施設の名称・所在地・開設予定日などを記入します。

「美容所開設届」は、細かな構造設備が法令等に適合するかなど確認を受ける必要があります。そのため、工事の着工前に窓口で相談するのがベストです。

MEMO

作業室面積に対する設置可能なセット椅子の数、照明の明るさ、換気設備等、たくさんの基準が設けられていますが、地域・自治体により規定が違います。美容室の完成予定平面図等を持っていきながら相談してみましょう。

次に、美容師全員の美容師免許(原本)や結核や伝染性皮膚疾患の有無に関する診断書も必要です。結核と伝染性皮膚疾患の有無に関することがわかるものの診断書は、1〜3カ月以内に医師から診断されたものを提出します。

また、美容師が複数名(常時2名以上)いる場合は、管理理容師・管理美容師を置かなければならない規定があります。

管理理容師・管理美容師になるために

美容師免許取得後3年以上の実務経験を経て、都道府県知事の指定する講習会を受講・修了する必要があります。

さらに、申請手数料や開設検査手数料が必要です。その金額は、20,000円前後で、管轄の地域によって異なります。開設届の提出と同時に窓口で支払い、開設検査(立入検査)日時の調整を行います。

開設検査時のチェックポイント

美容所として、安心で安全に行うことができるかを、構造面・衛生面からチェックします。

  • 作業面の照明は100ルクス以上にする
  • 作業所面積が13㎡以上であること
  • 床や腰板にはタイル・リノリューム・コンクリート又は板等不浸透性材料を使うこと
  • 皮膚に接する布片や器具は客ごとに交換し、消毒すること
  • トイレを設ける場合は専用の手洗い設備を設けること

いろいろ細かな基準がありますが、保健所によって異なります。まずは保健所に相談して基準を満たせる工事の手配と、衛生アイテムのグッズの準備をすすめましょう。

検査が終わると、保健所から確認済証が発行されます。保健所から連絡があったら受け取り時に、認印をします。

このように保健所は、一度で終わらず、手続きのために何度か足を運ぶことになります。

社会保険・労災保険・雇用保険などの必要書類と提出先

事業主には、従業員を守るための各種保険(社会保険・労災保険・雇用保険)への加入も求められます。

社会保険について

社会保険は、大きく「健康保険」と「厚生年金保険」とに分かれます。美容室は、社会保険の適用における法定業種に指定されていませんが、法人の場合は、加入義務があります。

「健康保険」からは、出産時に一時金が支給されたり、産前産後休業中に出産手当金も給付されます。

また、「厚生年金保険」とは、国民年金の支給額に加えさらに上乗せして年金を給付する制度となります。

年金事務所に提出する書類
  • 新規適用届出
  • 被保険者資格取得届
  • 被保険者異動届
  • 履歴事項全部証明書又は登記簿謄本(法人の場合)
  • 事業主の世帯全員の住民票(個人の場合)

労災保険について

労災保険は、スタッフの通勤途中や仕事中の怪我や病気を補償する保険になります。

家族以外の従業員を一人でも雇用した場合には労災保険への加入が必要になります。

労働保険監督署に提出する書類
  • 労働保険関係設立届出
  • 労働保険概算・増加概算・確定保険料申告書

雇用保険について

従業員が失業した後の一定期間、失業手当として給付をうけられるものが「雇用保険」です。

雇用保険に関しては、労働時間が週20時間以上でかつ1か月以上の雇用期間がある従業員を雇用した場合には加入義務があります。

MEMO

法人であれば、美容院で働く従業員は雇用保険へ強制加入、個人事業主の場合は、従業員が5名以上で強制加入となり、5名未満であれば任意加入です。

ハローワークに提出する書類について

ハローワークに提出する書類
  • 雇用保険適用事業所設置届
  • 雇用保険被保険者資格取得届

消防関連の届出書に提出する書類

最後に、管轄の消防署に提出する書類について解説します。

管轄の消防署に提出する書類
  • 防火対象使用開始届出書
  • 防火対象物工事等計画届出書(店舗の修繕など、模様替えなどの工事する場合)
  • 防火管理者選任届(収容人数30人以上の場合)

美容室を開業する以上、防火対象物となる建物についての届け出が必要になります。その建物や建物の一部を使う場合、使い始める7日前までに、「防火対象使用開始届出書」を消防署へ提出しなければなりません。

また、店舗の修繕など、模様替えなどの工事をする場合は、「防火対象物工事等計画届出書」を提出します。

さらに、美容室の収容人数が30人以上の場合、防火管理者が必要となります。「防火対象使用開始届出書」と併せて「防火管理者選任届」を提出しましょう。

MEMO

防火管理者は、延べ床面積が300㎡未満であれば、甲種防火管理者か乙種防火管理者が必要となり、300㎡以上なら甲種防火管理者が必要となります。

まとめ

開業するには各機関へ様々な手続きや申請が必要になります。それぞれ申請先や提出期限、時期が異なりますので、リストを作って事前に確認しておくなど、早めに準備をして余裕を持って申請できるようにしましょう。参考にして成功する美容室開業のために役立ててください。