2014年に創業した「ALBUM(アルバム)」
クリエイティブによる打ち出しも含め、SNSに特化した集客を中心に異色の存在とブーイングを浴びつつも、美容業界に斬新な風を吹き込み、瞬く間にトップサロンの仲間入りを果たした同サロン。インスタグラムのフォロワー獲得方法や応用方法について、「ALBUM」立ち上げに関わり、新宿店にてプロデューサーを務めるNOBUさんにお話を伺います。〈聞き手= 竹治昭宏〉
早速ですが、インスタグラムはいつ頃から始めたんですか?
インスタグラムがリリースされたのは、2010年頃だと思うのですが、その頃から始めてました。その当時は画像を編集するアプリとして使ってましたね。
その時は雑誌のヘアメイクをやっていた頃で、『JJ』のおしゃPというファッションカルチャーが全盛期でした。モデルの子たちをヘアメイクしたものやファッションショーの写真を、インスタグラムで加工してアメブロに挙げていたんです。面白い加工アプリでたな〜と感じていました。
おしゃPブームありましたね!
まだ、雑誌のスタイルを見て指名がきていた時代です。それが段々SNSに移っていくんですよね。個人的にも自分たちでできてすぐ見れるって言う手軽さが、楽しかったです。
それでヘアやファッションをもっと見せたい、広めたいって思って続けていくうちに、今度はモデルの子がタグ付けしてくれてどんどん増えていった感じです。でも「ALBUM」に入る頃は全然で、フォロワーも1万人くらいだったと思いますよ。
それでも多い方だと……
今と違って、コンセプトを決めて一生懸命アップしている感じではなかったですね。当時は興味を惹かせるためにバラバラに面白いものをあげていた結果、メルちゃん人形にヘアアレンジしたものがバズったこともありました!
「ALBUM」に入社してから、インスタグラムへの取り組みを変えたんですか?
会社に入ってヘアメイクの仕事は一切辞めたんです。「ALBUM」が軌道に乗るまでは、そういうのやったらあかんと!
それでどう軌道に乗せるべきか戦略を考えたときに、動画をやったらもっと面白いのでは?って。
動画ですか!?
オーナーの槙野さんが、どこから仕入れてくるのかわからないけど、フォトジェニックな商品ばかり持ってくるんですよ。一発でハイライトを取れるものだとか、レーザーを当てながらバリカンでカットできるものだとか……。それらを試しながら動画をアップしていたら、一気に10万人くらいの方にフォローいただくことができました。
それはすごい!
どうしてかなって分析したときに、美容師個人としてインスタグラムを頑張っている人はいたけど、会社として取り組んでいるところはあまりいなかったことに気づいたんです。
個人よりは会社のメンバー全員で取り組もうとオフィシャルの中にインスタグラムを取り入れました。それをホットペッパービューティーと連動させたところ、メンバー全員右肩上がりにフォロワー数は伸びていきましたね。
確かにALBUMが出来た頃は、個人の美容師が頑張ってたな、という印象はあります。
キュレーションサイトで紹介されたり、セミナーに引っ張りだこだったり、ヘアアレンジを紹介する美容師の人気が凄かったですよね。正直にいうと、僕らも彼らのことは意識していました。
メンバーそれぞれが個々で彼らに勝とうという目標を掲げ、数字を超えたときは嬉しかったですね。オープンから3年くらいで15万人くらいのフォロワーがついて、個人的にも取材のお話をよくいただくようになりました。インスタグラムをやるにつれ、個人の価値も会社の価値も上がった気がします。
インスタグラムの秘訣は” 狩り “を楽しむこと
「HAIRinfo」 のヘアサロン・美容師のランキングサイトでは、常に上位と注目度は高いですが、ランキングは気にしてますか?
見ますよ。ただ、順位を意識しているとかではなくて、「地元の大阪で一番フォロワー多いやつ誰だ?」とか「このエリアの一番は?」といった具合に、仕事やプライベートでいろいろな地域に行ったときに、その地域のランキングをみて楽しんでます。Googleマップで地図を見るような感覚です(笑)
面白い見方ですね(笑)。では、インスタグラムの更新に関して気をつけていることはありますか?
同業者から見たら簡単でも、お客様が見てわかりやすいものをアップすることです。
更新するためのネタ集めって、難しくないですか?
僕はネタ集めを「狩り」って呼んでるんですけど(笑)
営業中を「狩り」の場所にしてますから、素材がなくなることはないですね。どんなに忙しくてもいいお客さん見つけたらどんだけ混んでても絶対に撮ります。
撮るための努力は惜しまない?
そうですね。そこはもうお店ぐるみでそういう風潮です(笑)忙しすぎて撮れないときは、みんな心の中で泣いてるんじゃないかな!?「いい素材がいるのに〜」って!
獲物がいないときは撮り溜めしたものをアップするので、インスタグラムを更新しない日はないですね。撮ったらすぐあげたくなるんです。本格的に「ALBUM」で取り組み出したとき、は1日に10枚ぐらいアップしてました。セミナーでそれを話すと、「そんなに撮れないし、アップできませんよ」とよく言われます。でも撮りたくなるんですよね。(笑)
楽しんで写真をアップする姿勢が、フォロワーの獲得に繋がったのかもしれませんね。
ありがとうございます。でも最近はフォロワーを増やそうというより、自分のイメージを確立させようと思って、アップする写真を変えていってます。
ん、それは具体的にいうと?
今までは、料理もあればヘアもある。要素が混在していて統一感がなかったんです。でも最近はアップする写真に統一性を持たせてて……ほら、わかりやすくなってるでしょ?
確かに。
フォロワーの心を掴む努力はしますけど、そうすることでフォロワーが減ってしまっても別に構わないんですよ。コアなファンを増やしたいし、今後の方向性を考えたらイメージ作りは大切かなと。NOBUって何が得意なの?という部分をもう少しお客様に感じて欲しいなと思っています。
あくまでもお客様ファーストということですね。
みんな目が肥えているから、悲しいことにずっと同じだと飽きられちゃうんです。それを踏まえつつ新規のフォロワーを増やすためには試行錯誤する必要はあると思います。ただインスタグラムのおかげで美容師としてのイメージはもちろん、僕が料理できることを知ってもらえたので、そこは大切にしていきたいです。
お気に入りのハッシュタグはありますか?
そんなに気にすることはないんですが、最近は「バリカット」や「NOBUカット」など、ハッシュタグを作るようにしています。会社で流行しているハッシュタグは色々あるので、それも試すけど、インスタグラムはハッシュタグだけじゃないような気がします。
ハッシュタグだけじゃない……その心は?
バズると、そこに生まれるバズる空間があると思うんです。人気が集中している人たちがいて、そこだけがピックアップされるというロジックがあるとおもっています。
あくまで感覚的な話で探り途中ですけどね。でも人気のハッシュタグはつけまくりますよ!これキタなって思うとキマすし、自分が感覚的に手を抜いてしまっていると、全然ダメです。
過去にやったことを繰り返しても過去のイイね以上になることはほとんどないですね。これ、実証済みです。(笑)
見飽きちゃうんですね。
絶対にあると思います。例えばバリカンカットは、僕のユーザーは見飽きちゃってます。でもやり続けますよ。だから最近はイイねよりも保存数を気にしています。
NOBUさんからみて、インスタグラムの使い方が上手な後輩はいますか?
ここ最近でいうと、銀座店スタッフの実於ちゃん(@ymtmio)かな! 実於ちゃんは最近フォロワーが爆上がりしていて、一ヶ月で一万くらい数字が伸びています。
何をやっているかというと、紐アレンジに特化した写真をアップしていて、ちょっと肩の力が抜けた感じで、マネしやすいのがいいでしょ?載せ方を技術一本に絞っている人は、ブランディングが上手だなと思います。僕らは美容師なので、やはり美容に関することじゃないとダメだなって。
個人的には料理の連載も好きでした。でもそのイメージがつきすぎちゃうと困るって話ですね。 ちなみに、意識している他サロンはありますか?
上手な人はみんな意識しています。LECOの内田くんはカラーもカットも上手いし、DaBの斎藤くんはカラーが本当に上手い。あとは海外の美容師は参考になります。「あっ、こんな切り方あるんだ」とか「このカラー新しいな」とか、常に新しい発見があります。
海外の美容師をフォローしてるんですか?
インスタグラムの「オススメ」に海外の美容師さんのアップしたものが流れているので、それをチェックして保存しています。海外の人も僕のを保存しているみたいで、インスタを通してお互いがお互いの技術を教えあってる感覚ですね。
インスタグラムの画像や動画から学ぶのってイマドキですね! アシスタントの子もそうやって学んでいるのでしょうか?
インスタグラムはあくまでも手段であって、試行錯誤している中で自分なりの引き出しを増やしてくれればいいなと思います。例えばいきなり明日からスタイリストデビューするとして、ほとんどの子が苦労するんですよ。「お客様を満足させられなかった」とか「違う施術の方が有効だった」とか。結局トライ&エラーの繰り返しなんですよね。100%以上の仕事は常に心がけるけど、僕だってミスするときはあります。失敗を失敗で終わらせないために、日々勉強あるのみです。
毎日が勉強。心に留めておきます!
僕が仕事をするうえで座右の銘としている言葉のひとつに、「自分が変われないのに、お客様は変えれない。」というものがあります。固定観念があると人は変化を怖がってしまうけど、自分が変われるからこそ、お客様を変えることができるはず。それをやれない人は指名も入らないし、人気も出ないのかなと思います。
NOBUさんにとって変化を与えてくれたのがインスタグラムだった?
そうですね。変化や刺激を与えてくれたのがインスタグラムで、インスタグラムとともに成長してきたのが、僕。もっというと「ALBUM」そのものなのかなと!
インスタグラムは写真をアップするだけで、同じ時間や価値観をいろいろな人と共有できる点が面白いですよね。すぐに反応が返ってくる点も僕には合ってたように感じます。
巷では「インスタ疲れ」という言葉もありますが……。
全く無縁ですね、日々ネタしか探してないです(笑)
〈取材・文= 竹治昭宏 / 編集=堀場由衣 / 撮影=木村元〉