【Vol.04】美容室開業資金はいくら必要? 用意したい自己資本の目安と資金調達の方法

ー美容師として自分の店舗を構え、オーナーとなる。

第4回は「美容室開業資金の調達」について解説いたします。

独立開業をするなら避けては通れない開業資金についての問題。 自分のお金だけで全部賄えるだけの貯蓄があるのなら何も問題ありませんが、そのような人は少ないはず。 基本的に借入などを利用して開業資金を工面することになりますね。


そんな開業資金の調達に関して、「開業資金はどれくらいかかるの?」「自己資本はどのくらい用意しておけば良い?」「資金調達はみんなどのようにしているのだろう?」などを疑問に思うことはありませんか?

この記事ではそんな悩みを一緒に解決していきましょう。

また、現実に動き出しやすいように、実際に利用されることが多い借入先の紹介や注意点、あるいは開業時に知っておきたい助成金などについてもまとめました。

開業資金はどのくらいかかる? 自己資本比率を意識して資金調達しよう!

開業資金は一般的に、個人経営の美容室でも1,000万円以上かかると言われています。 では、自己資本としてはどのくらいを用意すればよいのでしょうか?

美容師の独立開業をサポートする企業「ビューティーガレージ」の調査から独立開業時の自己資本について引用させていただきました。

53人のオーナーのうち、自己資金が「201万円以上500万円以下」の層が8割に上っています。

その中でも、「301万円以上400万円以下」が最頻値で、平均は319万円でした。

100万円以下の人や501万円以上の人もいますが、自己資金の目安は200万円~500万円とみてよいでしょう。

【美容室開業のリアル】データでみる自己資金と美容師のキャリア | SALONスターター

こちらの調査結果からも分かる通り、目安として開業資金の3〜5割ほどを自己資本で準備するのが望ましいです。

もちろん開業したいサロンの規模が大きければそれだけ開業資金はかかってきますので、自己資本の準備目標も大きくなります。

これより自己資本が少なくても開業できないわけではありませんが、開業資金の自己資本比率が小さくなってしまうということはつまり借り入れる額が大きくなるということです。 当然ながら、その分返済額が増えて経営が苦しくなってしまいます。 

自己資本率を上げることは潰れないサロンにするために非常に重要なことですので、借入額を最小に抑えて自己資本率を上げるようにしましょう。

開業資金を用意する方法

それでは、自己資本で足りない分の開業資金を用意する方法はどのようなものがあるのでしょうか? 開業資金を用意する方法は以下のようなものがあります。

  • 自己資本
  • 身内等からの借入
  • 金融機関からの借入
  • 補助金・助成金の活用

1. 自己資本

まず基本となるのが自己資本です。 先ほど説明した通り、少しでも自己資本の割合を上げることが重要です。 目安としては3〜5割程度は自己資本で用意したいところです。

自己資本がいくらあるのかというのは、単にその後の経営が楽になるというだけではなく、それ以上の意味を持ちます。

自己資本額というのは誰から見てもわかりやすい「その人のやる気や信頼のバロメーター」にもなります。 当然自己資本が多い人の方が金融機関からの融資も受けやすくなります。

独立開業を考えるなら、少しでも自己資本を貯めておくことを意識するようにしましょう。

2. 身内等からの借入

場合によって検討できるのは、親族や友人等から借りることです。

独立開業を応援してくれ、お金を預けても良いと言ってくれるような親族・友人がいるのであれば、非常に心強いですね。 そのようなサポートしてくれる協力者がいるのであれば、事業も成功しやすいものです。

ただし、お金のトラブルは築いた信頼をも壊してしまうものです。

しっかり書面に残し、お互いに借入金額や返済について確認できるようにしておきましょう。こういうことは貸す方からは切り出しにくいものですので、こちらからきちんと契約書として残すことを提案しましょう。

親しき仲にも礼儀あり、むしろ親しき仲だからこそ しっかりしましょう。

3. 金融機関からの借入

自己資本で足りない開業資金を調達方法として主な手段はこの金融機関からの借入になるでしょう。

借入先として検討できる選択肢は以下のようなものがあります。

  • 都市銀行 / 地方銀行
  • 信用金庫 / 信用組合
  • 日本政策金融公庫

都市銀行 / 地方銀行

融資と聞いて真っ先にイメージが湧きやすいのは銀行でしょう。 銀行にはメガバンクとも言われる都市銀行と、地方銀行とがあります。

都市銀行とは「みずほ銀行」や「三井住友銀行」などと言った誰でも聞いたことがあるような全国展開している銀行のことです。都市銀行は基本的に少額の創業融資などには対応しないことが多いので、ここでは選択肢から外れます。

地方銀行は「横浜銀行」とか「栃木銀行」などのように都道府県や地域の名前などを冠していることが多いです。地方銀行の場合は銀行によって少額融資も積極的に行っているところもありますので、選択肢のひとつにはなります。

お近くの銀行がどのような取り組みをしているのか確認してみたり、実際に相談してみると良いでしょう。

信用金庫 / 信用組合

銀行よりも融資を受けやすい選択肢として「信用金庫・信用組合」があります。

これらの機関は比較的小規模な事業者を対象とした融資を行っていますので、基本的に融資の相談には積極的に応じてくれるでしょう。

日本政策金融公庫

美容室開業資金の融資なら、まずいちばんの選択肢として考えられるのが政府系の金融機関である「日本政策金融公庫」です。

行政機関として創業支援をしてくれますので、きちんとした事業計画があれば積極的に融資してくれるはずです。 

4. 補助金・助成金の活用

もうひとつ検討したいのが、創業をサポートしてくれるような補助金・助成金の利用です。 行政機関や民間団体が創業や事業主をサポートするためさまざまな補助金・助成金を給付しています。 

原則として、補助金や助成金は返済不要ですので、受け取れれば非常にありがたいですよね! 自分が利用できるものはないか調べてみると良いでしょう。

自己資本比率が高い身の丈にあった計画が重要

何度もお伝えしている通り、まず重要なのはできるだけ自己資本を用意し、開業資金の自己資本率を高めることです。 そうすることで潰れにくい健全な経営を行いやすくなります。

自分で用意する資金を増やすことだけでなく、融資額を減らしてより安い資金で開業することを目指すのも自己資本率を上げるには有効です。 

開業時は物件や内装、導入機材などいろいろこだわりたくもなるものですが、身の丈にあった計画を立てることが重要です。

また、開業後の収支計画をきちんと立てて、毎月の利益からきちんと返済の計画が建てられていることも大切です。

無理のない融資を受けて、潰れにくい経営をするように心がけましょう。

公庫や信用金庫から必要な資金を借り入れる

しっかりと計画を立てたら、必要な分だけを公庫や信用金庫などから融資してもらうようにしましょう。

融資を受ける際には「創業計画書」というものを書く必要があります。これはただ記入欄を埋めさえすればいいわけではなく、この計画書の記載内容は融資の審査に大きく影響します。

創業計画書には自分の経験や事業内容、収支計画を具体的に、わかりやすく書くことが求められます。

確かに作成は大変ですので、税理士などの専門家にサポートを受けるの方もいます。

しかしこの創業計画書に記載すべき項目は、実際に事業を軌道に乗せていくために必要となることでもあります。 そのため大変ではありますが、自分自身でよく考えて記入するのがおすすめです。

ある意味「これすら満足に書けないようでは事業は成功しないよ」と試されていると思って、時間をかけて取り組みましょう。

可能なら補助金や助成金を活用する

行政機関などでは政府の政策と連動して返済不要の補助金・助成金を給付しています。 美容室開業の際に使えそうなものもたくさんありますので、ぜひチェックしてみましょう。

例えば、以下のような助成金が利用できる可能性があります。

  • 創業助成金(東京都のみ)
  • 小規模事業者持続化補助金
  • 受給資格者創業支援助成金
  • ライアル雇用奨励金
  • キャリアアップ助成金
  • 人材開発支援助成金
  • 地域雇用開発助成金
  • 地方再生中小企業創業助成金
  • 軽減税率対策補助金
  • IT導入補助金
  • ものづくり補助金

特に従業員を雇用する場合に使える助成金は数多く存在しますので、雇用の予定がある方はよく調べておきましょう。

また、東京都での開業を予定なら公共財団法人・東京都中小企業振興公社が行っている「創業助成金」をぜひ検討したいです。

これはアベノミクスによる経済政策の一環で生まれたものです。 日本経済の活性化を目的として、経費の一部を補助してくれます。

こちらも従業員の雇用が一名以上必要ですが、100万円〜300万円と大きな金額を補助してもらえますので、活用できないかチェックしてみましょう!

まとめ

以上、今回は「開業資金の調達」というテーマでお話しました。 ポイントをおさらいしておきましょう。

  • 美容室の開業資金は一般的に個人経営でも1,000万〜1,500万円程度
  • 開業資金の調達は自己資本と公庫などからの融資が中心。身内からの借入や助成金も利用できる
  • 自己資本比率は3〜5割程度あるのが望ましい

何度もお伝えしてきたように、自己資本比率を少しでも高めて無理のない経営をすることが何より大切です。 助成金などもうまく使って融資額を最小に抑えて開業できるよう最善を尽くしてみましょう!

次回の第5回は「融資を受けるのに必須な『事業計画書』の上手な書き方」についてお話いたします。 

この記事が少しでもあなたの独立開業の助けになれば幸いです。