【Vol.13】サロンの規模と商圏 | 店舗イメージに応じた商圏設定

ー美容室経営成功の鍵を握る、不動産選定

前回お伝えした通りサロン独立開業が成功するかどうかは、70%以上不動産選定で決まる、とも言われています。当連載では、前回そんな「不動産選定の重要性」について解説いたしました。

前回、不動産選びの際にチェックすべき重要ポイントを15点紹介いたしました。おさらいしておきましょう。

①出店エリアの選定

  • 都内、都下、県(首都圏)
  • 最寄り駅の乗降客数
  • 所属市区町村の人口
  • 昼間人口/夜間人口
  • 近隣の学校分布と生徒数 (大学・女子大)
  • マンション分布
  • 近隣施設の状況
  • ターゲット層の生活導線
  • 近隣の美容室の件数

②候補となる物件の選定

  • 坪数
  • 予算
  • 最寄駅から徒歩圏内かどうか
  • 階層(1F,2F or 地下)
  • 通りに面しているか否か
  • 近隣に似たコンセプトの競合店があるか

今回はこれらの内容について解説する前に、まず理解しておきたい「サロンの規模」と「商圏」について解説いたします。

次回以降で上記の15のポイントについて深掘りしますので、それをよく理解するための下知識をつけていきましょう。

なお、この記事は小規模サロンの開業を考える人にとっても参考になる内容ですが、主には「サロンを大きく成長・拡大させていきたい」と考える方へと向けて執筆しております。 あらかじめご了承ください。

出店エリア調査前に重要な3つのこと

これから美容室経営を始め、サロンをどんどん成長・拡大させていきたいと思うのであれば、前回お伝えの通り出店エリアの選定は非常に重要です。

失敗しないエリア選定のためには、次の3点を意識して調査を進めるようにしましょう。

  • お店のイメージやコンセプトを明確にしておく
  • ターゲット層や集客方法をはっきりさせておく
  • 綿密なリサーチ・情報収集をもとエリア選定をする

サロンの繁栄・成功のためには戦略が必要です。お店の規模やコンセプトを明確にして、ターゲットとなる顧客層をイメージし、毎月どのくらいの人数をどうやって集客するか。

このように、お店のイメージを明確にしておかないと場所を選ぶのは難しいでしょう。

そして、それらのイメージを固めたら実際にリサーチをしていきますが、リサーチは綿密に行うことがサロン繁栄への近道です。しかし多くの方はここを疎かにしてしまっています。

上であげた[不動産選びの重要ポイント]を中心にリサーチ・分析して、自分のお店のイメージに最適な出店エリアを探しましょう。

例えば、今美容業界で急成長が注目される美容室『ALBUM』は、非常に戦略的な調査・検討のもと出店するエリア・物件を選んでいると聞きます。それも数年で急成長を遂げたひとつの要因といえるでしょう。

商圏規模を設定する

お店の規模・コンセプトなどイメージが固まったら、エリア選定のためにまず考えるべきは「商圏」です。

お店の規模が大きく、大きな利益目標・売上目標を掲げるのであれば、当然それに見合ったお客様を確保する必要があります。(※利益目標・売り上げ目標については連載第1回を参照)

【Vol.01】美容室独立開業の第一歩!「利益目標」から逆算思考で理想の店舗を具体化しよう

売上目標を達成するために必要な顧客数をもとに、狙うべき商圏を設定します。

1. 商圏の定義

「商圏」という言葉で表現されるもの2つあります。

  • 設定商圏…自分で設定した、自店への集客を狙いたいエリア
  • 顧客分布図…現在来店されているお客様の住所をマッピングして得られるエリア

ここで話している商圏というのは当然ながら「設定商圏」のことです。

つまり、「商圏 = 自店への集客を狙いたいエリア、このエリアで競合店と戦ってシェアを獲得すると決めたエリア」ということになります。

2. タイプ別商圏範囲の目安

自店の商圏をどのくらいの範囲を設定すべきなのかについては、(株)マーケティングスペース社が発行する「地域に根ざしたサービス業の商圏戦略~ビューティサロン編~」内にあります、次の表が目安として非常に参考になります。

自分の出店したい店が年商いくらを目指しているのか、何面のセット面を想定しているのかによって、狙うべき商圏範囲は変わります。

上の表の「パターン」においてType I 〜 IVで示されているのがどのような店舗なのか、具体的でわかりやすく解説いたします。

Type I

チェーン展開する大規模サロン。セット面10面以上を有し、従業員も多数雇い入れて年商1億円以上を狙う店舗

Type II

地域No.1を狙い、近隣で複数店舗を展開するようなサロン。セット面6〜10面程度、従業員も10名程度いて年商5,000万円以上を狙う店舗

Type III

少し規模の大きい個人店。セット面は4〜6面程度で、スタイリスト・アシスタントで10名以下程度を雇い入れて経営を行い、年商2,000万以上を狙う店舗

Type IV

地域密着の個人店。近隣のお客様をターゲットに、オーナー兼スタイリストが中心となり、必要に応じて1〜3名程度を雇い入れたり、家族に手伝ってもらったりして経営を行う店舗

イメージが湧いたでしょうか?

Type I:大規模サロン

Type Iのような大規模サロンで出店を考える場合、100万人の商圏人口が必要です。

当然、東京・大阪・福岡・仙台などの大都市に出店します。立地としては人口の他にアクセス性の高さも重要で、その他宣伝広告によって広域からお客様を集客する必要があります。

Type II:地域No.1の中規模サロン

Type IIは地域No.1を狙うような中規模サロンです。

全国的に知名度はなくても、そのエリアでは有名な美容室などがそれに当たります。

Type IIIが成長してこの形になる場合もあります。

駅前などの好立地を狙い、2〜3駅分くらいまでが商圏範囲となります。その商圏で十分なシェアを獲得し、店舗のキャパシティを超える顧客数となってきたときに2号店を考えていきます。

Type III:大きめの個人店

Type IIIは「少し大きめの個人店」といったイメージです。

例えば、夫婦共にスタイリストで、さらにスタイリスト数名とアルバイトのアシスタントも数名雇い入れてバンバンお客さんを回したい、と言った例が考えられます。

この場合、自店から半径1km程度を商圏と捉え、その中で自分の強みを目指してNo.1を目指しましょう。

ちなみに、ここで言うNo.1とは何も「売上トップ」だけを指す訳ではありません。

自分がターゲットと定めているお客様にとっていちばん満足度の高い美容室であり、それで目標のシェアが獲得できていればいいわけです。

Type IV:小規模の個人店

小規模の個人店の場合、生き残っていくために大切なのは「地域のお客様の生活に溶け込んだサロン」になることだと言えるでしょう。あまり広いお客様をターゲットにする必要はなく、車や自転車で家から難なくいけるくらいの範囲が商圏となります。

このような経営スタイルは大都市よりも地方に馴染みます。毎日の買い物や子供の送り迎えなどといったお客様の生活の中に溶け込み、飛び込みのお客様や口コミできてくれたお客様からシェアを獲得していくようなイメージです。

特に、遠くへアクセスするのが大変な高齢の方であったり、基本的に自宅付近のみを生活圏としているような方がターゲットとなるでしょう。

3. 具体的なリサーチをもとに商圏範囲を考える

上の表で示された商圏範囲は目安として有用ですが、実際にはエリアによって人口密度が異なりますので、目標となる商圏人口を達成するために必要な商圏範囲は変わってくるでしょう。

具体的には、

  • 最寄駅の乗降客数
  • 所属市町村の昼間人口や夜間人口
  • 近隣の学校やマンションの分布

などのリサーチをもとに具体的な商圏を考えることで、より理想に近い出店エリアを探し出すことができるでしょう。

まとめ

今回は、物件選びのリサーチを始める前に知っておくべき「サロンの規模と商圏」について解説いたしました。重要ポイントを確認しておきましょう。

  • お店の規模やコンセプトが明確でなければ場所を選ぶのは難しい
  • ターゲット層や集客方法もはっきりさせてからリサーチに臨むこと
  • 自分が目指したい店舗の規模に合わせた商圏人口、商圏範囲を考えておくことが場所選びでは大切

また、具体的な数値面のおさらいもしておきます。目指す規模に応じて商圏の目安は次のようになります。

サロン規模具体例商圏
大規模サロン(全国チェーン)・セット面10面以上
・年商1億円以上
・商圏人口100万人
・商圏半径20km
中規模サロン(地域No.1サロン)・セット面6〜10面
・年商5,000万円以上
・商圏人口5万人
・商圏半径1.5km
小規模サロン(スタイリスト3〜4名程度)・セット面4〜6面
・年商2,000万円以上
・商圏人口2万人
・商圏半径800m
個人店(スタイリスト1〜2名程度)・セット面4面以下
・年商2,000万円以下
・商圏人口8,000人
・商圏半径300m

次回は今回の内容を踏まえて「出店エリアの選定」について解説いたします。

この連載があなたの美容室開業の助けになれば嬉しく思います。