【Vol.16】候補物件の選定 | 物件の立地に関する3つのポイント

ー美容室経営成功の鍵を握る、不動産選定

独立開業したサロンが成功するか否か、70%以上を決めると言われる不動産選定。

この連載では、第12回より不動産選定について解説しています。第12回では、[不動産選定における15の重要ポイント] を紹介しました。 以下の通りです。

①出店エリアの選定

  • 都内、都下、県(首都圏)
  • 最寄り駅の乗降客数
  • 所属市区町村の人口
  • 昼間人口/夜間人口
  • 近隣の学校分布と生徒数 (大学・女子大)
  • マンション分布
  • 近隣施設の状況
  • ターゲット層の生活導線
  • 近隣の美容室の件数

②候補となる物件の選定

  • 坪数
  • 予算
  • 最寄駅から徒歩圏内かどうか
  • 階層(1F,2F or 地下)
  • 通りに面しているか否か
  • 近隣に似たコンセプトの競合店があるか

今回はこの後半、「候補となる物件の選定」の6項目について深掘りしていきましょう。

物件の坪数や予算

坪数や予算は物件選びの基本中の基本ですね。これについては連載第12回で重要点の解説をしています。

さらに補足説明しておきましょう。

坪数

一般的な美容室の広さがどの程度か知っているでしょうか? 美容室全体としては15坪程度の美容室が非常に多いです。

15坪というと、だいたいセット面4〜6面くらいの規模となります。

セット面が4面程度であれば、「スタイリスト1名とアシスタント1名くらい」を雇えば回せるくらいの規模感となります。6面であれば、「スタイリスト3〜4名体制」でそれなりの人数を回すことも可能な規模です。

このくらいの15坪程度というのは、このように小規模〜中規模を使い分けられるちょうど良い規模感なため人気があるのです。

そのため、このくらいの広さの物件は多くて非常に探しやすく、物件選びの選択肢が豊富というメリットもあります。

予算

予算設定と上限設定の重要さを第12回で解説しましたが、それでは予算はどのように設定するべきでしょうか?これは連載第1回で解説した通り利益目標からの逆算で考えるべきです。

例えば、自分含めてスタイリストが3名、その他にアシスタント2名の計5名でサロン経営を考えているとしましょう。利益目標は月30万円とします。

スタイリスト1名あたり80万円の売り上げを目標とするならば、3名で240万円が月売上になります。

人件費としてスタイリスト2名に毎月40万円ずつ、アシスタント2名に30万円ずつがかかるとしましょう(保険税などを含む)。そうすると人件費で110万円が必要です。

材料代が月25万円、水道光熱費が20万円とするならばここまででかかる経費の合計が月155万円です。消耗品費やサービス拡充のための費用で月10万円、広告宣伝費用で月10万円を考えるなら、ここまでで175万円

ということは、家賃として支払える限界は月35万円程度ということになりますね。

このように、利益目標を出発点にして自分の店舗イメージと合わせて合理的に考えて予算を決めるのが失敗しないポイントです。

物件の立地 | 最寄駅からの距離・階層・通り沿いかどうか

前回記事までに「エリア選定」について解説しましたが、理想的なエリアを見つけ出したとしても「エリア内における立地」も重要な要素です。

立地として特に重要となるポイントが以下の3点です。

  • 最寄駅から徒歩圏内かどうか
  • 階層(1F/2F or 地下
  • 通りに面しているか否か

最寄駅から徒歩圏内かどうか

最寄駅から徒歩でアクセスできるかどうかで店舗の商圏は大きく変わります。東京都内で出店をする場合、地元の人以外もターゲットとして集客をしたいのなら、駅から徒歩5分以内であることが理想的です。

少なくとも徒歩10分を超えるようですとアクセス性が悪く、集客に大きな影響が出ます。都内で中規模以上のサロン経営を考えているのであれば必須とも言える事項でしょう。

駅からの方面

また、同じ徒歩5分でも駅からの方面によっての違いもあります。前回記事で解説した通り、想定されるお客様の導線上に出店するのが理想的でしょう。 

例えば、流行に敏感で若者にウケるサロン経営を都内でしたいと考え、出店エリアのリサーチから山野美容専門学校の学生をメインターゲットに代々木駅エリアに出店を考えたとしましょう。

この場合、メインターゲットの生活導線は代々木駅北口と学校を結んだ道がメインとなります。それなのにもし東口側に出店してしまっていたら、かなり損なのは明白ですよね。

学校や役所、大型商業施設などのランドマークとなる建物や大規模なオフィスビルなど、人が集まるポイントと駅を結んだ導線を意識するようにしましょう。

駅自体のアクセスのよさ

また、その駅自体の便の良さも考慮したいポイントです。

都内で考えた場合、最寄駅が乗り換え駅であったり、複数の駅からアクセスできる立地ですと集客しやすいですが、単一路線のみからしかアクセスできないとなると少々集客力は劣ります。

同じ都内の駅チカ物件だと言っても、例えば山手線が止まる駅と中央線が止まる駅とではアクセス性が違うわけです。

駅からの距離だけでなく、駅自体のアクセス性も考慮しましょう。

通りに面しているか否か

通りに面しているか否かも物件選びの大きなポイントです。

大きな通り沿いと裏道沿いとでは、露出やアクセス面が全く違ってきます。大きな通りに面した路面店の場合、以下のようなメリットが考えられます。

  • 多くの人の目に留まり、店舗が認知される
  • 場所が分かりやすく、アクセスしやすい
  • 車でのアクセスがしやすい

都内で駅近、大通り沿いとなるとそれなりの家賃にはなりますが、多くの人が日常的に店舗の前を日々通ることになりますので、非常に集客力は高いと言えます。

また、地方の場合は車での来店が多くなりますので、大通り沿いはアクセスしやすく、車で簡単に来店することができます。

「あそこに新しい美容室ができた」と多くの人に認知してもらえるだけでも集客には大きなプラスになりますので、通り沿いの物件を選ぶメリットは多く存在すると言えるでしょう。

階層(1F/2F or 地下

1階路面店と2階以上の店舗(空中店舗)では集客に大きな差が生まれます。

1階路面店と2階以上とでは、通行人からの認知が全く違います。大通り沿いの路面店なら、何も広告宣伝していなかったとしても多くの人に認知してもらうことができますので、飛び込みの来店が見込めます。

ブランド力がある有名大型店や、低価格路線のチェーン店などは空中店舗でも問題ありませんが、知名度がない1店舗目の開業であればできるかぎり1階路面店で開業した方が成功の確率は上がると言えます。

近隣の競合店

近隣に似たコンセプトの競合店があるかどうかも物件選びで調査したいポイントです。

いくら有名店が近くにあったとしても、コンセプトやターゲット層が全く違えば差別化して集客を狙うことができます。しかし、ターゲット層が大きくかぶる上に知名度が高い競合店が同じエリアにあったとすれば、そこでの競争は厳しいものになると言わざる終えません。

地域で「〜と言えばここ!」と言われる美容室になれるようリサーチしておきましょう。

まとめ

今回は出店エリア選定に引き続いて「候補物件の選定」について解説いたしました。

内容をおさらいします。

  • 都内の出店なら最寄駅から遠くても徒歩10分圏内。5分以内が理想
  • 通りに面しているか否か。大通り沿いがベスト
  • 階層は1階路面店がベスト。特に知名度がない1店舗目はこだわるべき
  • 予算や坪数についてもあらかじめ考えておく
  • エリアにコンセプトやターゲット層がかぶる人気店がないか調べる

以上を踏まえたリサーチを行うことで、集客に強い物件選びが可能になります。

次回からは実際に不動産屋などへ出向いて物件探しをしていく段階について解説していきます。この連載があなたの独立開業の助けになれば幸いです。